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2016.01.01 Friday
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川原礫 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス ¥ 616 (2014-02-08) |
でもそこでぼくが感じたのはたとえようもなく深い寂寥だった。気が付くといつの間にか、ぼくを取り囲んだ世界からいくつかの色が永遠に失われてしまっていた。そこのがらんとした感情の廃墟の、うらぶれた山頂から、自分の人生をはるか先まで見渡すことができた。それは子供の頃に空想科学小説の挿絵で見た、無人の惑星の荒涼とした風景に似ていた。そこにはいかなる生命の気配もなかった。1日はおそろしく長く、大気の温度は暑すぎるか寒すぎるかどちらかだった。ぼくをそこまで運んできたはずの乗り物は、いつの間にか姿を消してしまっていた。もう他のドコニモイケナイ。そこでなんとか、自分の力で生きのびていくしかないのだ。(P.268)